254: 2017/01/16(月)19:11:00

サトシが1歳になった時、父親は深夜のトキワの森にサトシを置き去りにした。
獰猛な野生ポケモンたちが生息する、森の中心に。
小さなナイフをサトシに握らせて。

幼サトシ「パパ?」

サトシ父「すぐに迎えにくる。少し待っていてくれ」

幼サトシ「うん」

サトシ父「いいか。そのナイフはお前の守り神だ。それさえあればお前は大丈夫だ」

幼サトシ「うん、パパ。わかったよ」

なぜそんなことをしたのか。
確かめたかったのだ。
一族に受け継がれる、脳と肉体の才能を。

 

 

255: 2017/01/16(月)19:11:13

やがて、森に戻って来た父親は、予想以上のものを見た。
十数匹のポケモンの死骸の真ん中で、野生のトランセルの背中をナイフで切り裂く息子の姿を。

幼サトシ「あっ、パパ。トランセルの中にはバタフリーがいるんじゃないの?出てこないよ」

サトシ父「…それは変だな。きっとこいつは不良品なんだろう」

ピクピクと痙攣するトランセルを踏みつぶし、父親はサトシを抱きかかえた。

サトシ父 (素晴らしい…この子は本物だ)

サトシ父 (下賤な人間どもより遥かに優れた新種の生物。完全なる人類の進化形)

サトシ父 (私や先祖よりも格段に優れた才能!)

サトシ父「フフ…サトシ、悪魔や死神だろうとお前には敵わないだろうな」

幼サトシ「?」

 

256: 2017/01/16(月)19:11:23

ハナコ「あなた!?サトシとこんな時間にどこに行ってたの!?」

ハナコ「ってサトシ!?なにこれ!?ポケモンの血じゃないの!?」

サトシ父「騒ぐな」

ハナコ「あがっ…」

その日、帰宅したサトシが見たのは、父親に暴行されるハナコの姿だった。

幼サトシ (あっ、ママ血が出てる。もし僕もパパに殴られたら嫌だな。危ないな)

幼サトシ (ああでも、人を殴るのって楽しそうだな)

 

257: 2017/01/16(月)19:11:31

5歳になったサトシは、夕方、家の庭で初めて人を殺した。
いつもサトシを馬鹿にする、同い年の男の子だった。
サトシはその子を黙らせようと、何発も、何発も殴ったのだ。

幼サトシ「パパ。こいつ、もう動かなくなったよ」

サトシ父「ん?ああ…そうか…」

まずいことをしてくれた、と父親は思った。
初めての殺人はサトシの成長の証なのだから大いに結構だが、問題はその方法である。

サトシ父 (おそらくこの子供は、うちに遊びに来ることを親に伝えているだろう)

サトシ父 (サトシが犯人だと気づかれないよう、死体を隠そうと思ったが…)

サトシ父 (この状況ではそれも難しいか…)

サトシ父 (仕方ない)

 

258: 2017/01/16(月)19:11:39

父親は、ハナコにこのことを打ち明けた。

ハナコ「そんな…何かの間違いよ!サトシがそんなことするわけが…」

サトシ父「事実だ」

サトシ父「あの子は人殺しなんだよ。人の命などなんとも思ってないんだ」

ハナコ「…あの子はまだ小さいの!だから物事の善悪がわからないのよ!きっと、私たちの教育が間違ってたの!」

サトシ父「だからあの子を罰するなと?馬鹿を言え」

サトシ父「だいたい死体を隠したところで、今度は我々に疑いがかかるだけだ」

ハナコ「でも…でも…」

サトシ父「安心しろ。サトシはまだ小さい。死刑にもならなければ、一生塀の中ということもない」

サトシ父「いいか。他に選択の余地は無いんだ」

サトシ父「明日にもサトシを警察に突き出す」

 

259: 2017/01/16(月)19:12:02

その両親の会話を陰から聞いていた者がいた。
サトシである。

幼サトシ (俺が捕まる?嫌だな)

幼サトシ (殺すつもりはなかったんだし、悪いことじゃないはずなのに)

幼サトシ (二人も親がいるのに…どうしてどっちも罪を被ってくれないんだろう)

幼サトシ (なんとかしないとなあ)

サトシにとって、自由は命より大切なものだった。
その自由を奪おうとする両親など、サトシにとっては不要だった。

 

 

 

260: 2017/01/16(月)19:12:09

深夜、サトシは両親の寝室に裸で入ると、寝息を立てるハナコをナイフでめった刺しにして殺した。
父親の姿は見当たらなかった。

ハナコ「ひっ!?サトシ…?」

幼サトシ「…」

ハナコ「ぐ…サト…やべで…あ…」

幼サトシ「さよなら」

 

261: 2017/01/16(月)19:12:22

騒ぎを聞きつけ、寝室に入ってきたのは父親だった。

幼サトシ「ああ、パパ。ママが大変なんだ。こっちに来てよ」

サトシ父 (な…)

恐怖という感情は、人間を超えた力を手にした者にとって縁のないものである。
しかし、この時父親は、生まれて初めて恐怖を知った。
自分の息子に、このとても小さな少年に対して、直感で危険を感じたのだ。

サトシ父「ひっ…あ…ああっ…」

サトシ父「ひああああああああああああああ!」

一族の最高傑作であるサトシの殺意が自分に向けられている。
その事実に、父親は耐えられなくなって逃げ出した。

幼サトシ「…まあいいや」

ことが済んだ後、風呂に入り、自分の体に傷をつけたサトシは警察に通報した。
例の男の子やハナコの殺害は、トキワの森の中心で死体となって発見された父親の犯行であると片付けられた。
父親の死体には森のポケモンたちが群がっていたという。

 

262: 2017/01/16(月)19:12:30

これまでの人生をリセットしたサトシは、オーキドの家に転がり込んで生活を続けた。
人の心を操る技術は彼で高めた。
やがて、10歳になったサトシは初代ピカチュウと共に旅に出、戦闘技術と悪意を磨いていく。
そして…

サトシ「アローラ!俺サトシ!カントー地方のマサラタウンから来たんだ!」

人間を追い越した、とある少年の追憶―

 

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