207: 2017/01/16(月)18:38:13

スイレンはマオから奪い取ったデスノートの切れ端を破り捨てた。
だがマオはポケットに手を突っ込み、乱暴に新しい切れ端を取り出した。
ポケットから他の切れ端が何枚かこぼれたところを見ると、切れ端の予備はまだまだあるようだ。

スイレン (キリがない…!)

再びスイレンの名前を書き込もうとするマオに飛びかかり、今度は切れ端ではなくペンのほうを奪い取った。

マオ「…」

どうやらペンの予備は無かったようだ。
マオはスイレンのほうに首だけを向けたまま硬直した。

 

208: 2017/01/16(月)18:38:24

サトシ「そうだ。それでいい」

サトシがいるのはテンカラットヒル最奥部への、もうひとつの入り口から行ける高台である。
スイレンたちがいる場所からはサトシの姿は見にくい。
この暗闇の中、マオの動きだけに集中しているスイレンではサトシに気づくことはないだろう。

サトシ「まだバトルは序盤だったみたいでよかったよ。ピカチュウ、お前もさっきの戦いで疲れたろ。ゆっくり見物しようぜ」

ピカチュウ「ピッカァ!」

ゼルオギー「この状況…スイレンにはとんでもない苦痛だろうな。お前は他人が命懸けで戦ってる姿が楽しいのか?」

サトシ「はあ?当たり前だろ。全ての人間やポケモンは俺の所有物だ。遊びに使って何が悪いんだよ」

サトシ「ああそうだ。ハンサムの死体を持ってきてくれよ。あの変な道具以外にも使えるものがあるかもしれない」

ゼルオギー「…」

ゼルオギー (どうやら俺は渡す人間を間違えたらしい…)

ゼルオギー (お前のデスノート、正しい人間に渡せなかった…悪いな…)

 

209: 2017/01/16(月)18:38:41

マオの硬直は、そう長くは続かなかった。
ずっと無表情だったその顔を少しだけ強張らせ、そして元に戻し、マオはカエンジシのような俊敏な動きでスイレンに襲い掛かった。

スイレン「くっ…!」

スイレンは咄嗟に躱そうとしたが、頬を爪で切られてしまった。
その傷口から血が流れ出るよりも早く、マオはスイレンに更なる追撃を加えんと跳躍する。

スイレン「ぐがっ…」

飛び蹴りを腹に受けたスイレン。
何かがこみ上げてくる感覚に耐えながら、その場にうずくまる。

 

210: 2017/01/16(月)18:39:02

マオ「…」

マオはもう何も話さなかった。
死人のような表情のまま、ただひたすらにスイレンを攻撃するだけだった。

マオ「…!」

スイレン (来る!)

マオが右腕を振り上げ、スイレンの頭部を殴打しようとした。
しかしスイレンがバッグに入れてきたナイフを取り出し、マオの拳の軌道にかざしたため、それは阻まれてしまった。

マオ「…」

右手に深い切り傷をつけられようと、マオは動じない。
左手でスイレンのナイフを奪い、そして構える。
負傷など意にも介さぬように、次の攻撃の準備態勢をとった。

スイレン (この反応…!)

スイレン (間違いない!マオは操られてる!)

スイレン (それなら…)

マオがナイフを大きく振るよりも早く、スイレンはバッグの中の小瓶を手に取った。
そして立ち上がり、マオの顔にその中身の液体をふり掛けた。

 

 

211: 2017/01/16(月)18:39:23
すみません、風呂に入るので少し投稿をストップします

 

213: 2017/01/16(月)18:46:32
さとしさんならありえそうだからこまる

 

214: 2017/01/16(月)19:03:02

マオ「!」

スイレン「か…」

液体の正体は、マトマの実、ノワキの実、トウガの実を調合した凄まじく強い香辛料。
それがマオの顔面に付着するのと、マオのナイフの刃がスイレンの右肩に到達するのは同時であった。

スイレン「っつ…」

マオ「ああああああああああああああああ!」

辛さの単位を表すスコビル値では、材料にした3つの木の実の辛さはいずれも5万ほど。
そして、3種類を合わせた場合、その数値はおよそ45万となる。

スイレン「ふふ…ありがとうマオ」

スイレン「マオの自由研究、役に立ったよ」

木の実の調合をテーマにしたマオの自由研究には、このような一文が書かれていた。
「この調合は、辛いんじゃなくて痛い」

 

 

215: 2017/01/16(月)19:03:15

サトシ「…ここまでだな」

香辛料を食らい、目も開けられずに苦しむマオを見て、サトシは舌打ちした。

サトシ「寿命くらいなら変えられるんだろうが、人間の力じゃデスノートの力までは変えられない」

サトシ「だからあいつらはお互いを殺せないんだ。これ以上は見ていても無駄だ」

膝に座らせていたピカチュウをどかし、サトシは立ち上がった。
そして息を吸い込み、苛立ちを吐き出すように叫んだ。

サトシ「マオオオオオオオオオオオオオ!」

 

216: 2017/01/16(月)19:03:25

テンカラットヒルに響いたサトシの声。
それを聞いたマオは、顔面を走る痛みすら忘れたように沈黙し、高台に立つサトシの顔を見た。

マオ「あ…」

サトシはもうマオのほうを見ていなかった。
後ろを向き、親指を立てた左手だけを背後に伸ばしているだけだった。
無論、その親指の向きは下である。

ゼルオギー「…」

それを見たマオがこの世の終わりを見たような表情を浮かべた瞬間、マオの体は崩れるように倒れ伏した。
それがデスノートの力によるものであることは、スイレンの目にも明白だった。

 

217: 2017/01/16(月)19:03:34
マオ 心臓麻痺
〇年×月▼日午後11時00分
テンカラットヒルに向かい、その空洞部で何もせずにしばらく待つ。
やがて現れた顔見知りの少女に対し、その日クラスメイトにされたデスノートについての話を彼女にも話す。
その話が終わった後、持っていたデスノートの切れ端とペンを取り出し、目の前にいる少女の名前を途中まで書き込む。
手に持っているペンを無くしたら、考えうる限り大きなダメージを与えられる方法で目の前の少女を攻撃する。
そして自身の名前を叫ぶ、よく見知った男の声を聞き、その男のほうを見る。
男に見捨てられたという絶望感の中、心臓麻痺で死亡。

 

218: 2017/01/16(月)19:03:44

スイレン「なんで…」

スイレン「なんで…生きてる…?」

スイレンの関心は、マオの死にも自分の傷にも向いていない。
それもそのはず、死んだはずの男が目の前に現れたのだから。

サトシ「ふん…」

スイレンへの返答より先に、サトシはためらいなく高台から飛び降りた。
そしてそのままの勢いで、スイレンの腹を力いっぱい殴った。

スイレン「ぐ…おえええええええええええ!」

嘔吐するスイレンに、サトシはいつもの笑顔でこう言った。

サトシ「アローラ!スイレン!」

 

219: 2017/01/16(月)19:03:57

スイレン「サ…トシ…」

サトシ「いい表情じゃねえか。困惑と恐怖と憎悪がよく混じってる」

サトシ「あー、血とゲロも混じってるな。きたねえ」

スイレン「なんで…たしかに…殺したはず…」

サトシ「なんで俺が生きてるか気になるか?…ふん、簡単だ」

サトシ「俺がカキを殺した日、俺の服に血がついてたのを覚えてるか?」

サトシ「登校してすぐカキに突っ込まれたっけな」

スイレン「スカル団を殴ったからと…答えてた…」

サトシ「そうだ。それ自体に嘘はない」

サトシ「もっと詳しく言えば、デスノートの力を無効化するためにスカル団を利用したんだ」

 

 

220: 2017/01/16(月)19:04:05

サトシ「俺の死神…ゼルオギーが教えてくれたよ」

サトシ「名前を4回書き間違えられた人間には、デスノートが効かなくなるってな」

サトシ「俺はこれを利用した」

スイレン「まさか…」

サトシ「スカル団なんてアローラにウジャウジャいるだろ?あの日も1人捕まえた」

サトシ「そしてこう言ったんだ」

サトシ「俺の名前はヒロシだ。このノートに俺の名前を4回書け。俺の顔をよく見ながらな」

 

221: 2017/01/16(月)19:04:12

スイレン「な…」

サトシ「嫌がってなかなか従わなかったから苦労したよ。バカを調教するのは骨が折れた」

サトシ「実際、何本か骨を折って大人しくしてやった」

リューク「ククッ…ゼルオギー、お前のとこの人間ひでえな」

デリダブリー「全くだ。まあお前はジジイのゲームに参加してねえんだし問題無いけどな」

ゼルオギー「…」

 

222: 2017/01/16(月)19:04:19

サトシ「このデスノートの対策方法では、故意に4回間違えた場合は書き込んだ人間が死ぬらしいんだが」

サトシ「これはつまり、スカル団が死ななければ成功したってことになる」

サトシ「そしてスカル団は、実験が終わっても死ななかった」

スイレン「…」

サトシ「わかったかスイレン。俺にデスノートは効かないんだよ」

サトシ「俺を殺したつもりだったらしいじゃねえか。残念だったな」

グック「そのスカル団はどうなったんだ?」

ゼルオギー「こいつが殺した」

 

223: 2017/01/16(月)19:04:28

サトシ「ああそうだ。俺たちのことを国際警察が嗅ぎまわっていたんだったな」

サトシ「おい、ゼルオギー」

ゼルオギー「…ああ」

ゼルオギーがあの高台から持ってきたのは、ハンサムの死体だった。

スイレン「…こいつ」

サトシ「俺が殺しておいてやったぜ」

サトシ「デスノートと拳銃以外には大したもの持ってなかったな。スマホに財布、双眼鏡、傘、パーティ用のハナヒゲ…」

サトシ「本当に使えない奴だった」

 

224: 2017/01/16(月)19:05:29

スイレン「くっ…」

サトシに腹を殴られ、うつ伏せになっていたスイレンが静かに立ち上がった。

サトシ「ん?なんだその目は?俺を殺したいのか?」

サトシ「俺にデスノートは効かない。となれば素手で殺すしかないが…お前が俺を殺せるのか?その体で?その頭で?」

スイレン「…」

サトシ「ここでお前を殺してもいいが…せっかくだ。もう少し楽しみたい」

サトシ「今日は助けてやるよ。ボロボロの状態だけど、無事に家まで帰れるといいな」

サトシ「ああ、デスノートは奪わないでおいてやる。どうせ俺には効かないから問題ない」

サトシ「じゃあな!スイレン!」

さわやかな少年らしい笑顔を浮かべながら、サトシは俊敏な動作でテンカラットヒルの壁を登って去って行った。
二匹の死神と共に。

 

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