136: 2017/01/16(月)18:14:38

ポータウンは街全体がスカル団のアジトとなっている。
その奥、「いかがわしき屋敷」と呼ばれる建物の一室に、グズマはいた。

グズマ「俺たちスカル団はな。島巡りを達成できなかったせいで社会から弾き出された連中の集まりなんだよ」

グズマ「島巡りはアローラのクソみてえな風習だ。成功して島キングだのキャプテンだのになれるのは一握りの才能ある奴だけ」

グズマ「脱落すれば根性のないクズ野郎と見なされ、後ろ指をさされる」

グズマ「そして挫折感と社会からの疎外感から、トレーナーとして…いや人間としての自信を喪失しちまうわけよ」

グズマ「死神。てめえがもし俺みたいな人間だったら、アローラがいかに腐ってるかよくわかるだろうぜ」

グズマに憑く死神の名はキンダラ=ギベロスタイン。
破壊を好み、思考を嫌う凶暴な死神である。

ギベロスタイン「まず俺なら島巡りなんかしねえよ。最初っから暴れればいいだろ」

 

 

 

137: 2017/01/16(月)18:14:46

グズマ「俺はアローラの連中に知らしめたい。虐げられた人間の怒りをな」

ギベロスタイン「どうやってだ?」

グズマ「決まってんだろ…皆殺しだ!」

グズマ「アローラのクソ野郎どもごと、島巡りなんて古い風習をブッ壊してやるんだ!」

グズマ「そのための力ならここにある」

グズマ「俺を認めなかったクソ親父も!俺を見下しやがったククイのカスも!俺にバカみてえな説教しやがったハラのジジイも!俺を裏切りやがったクチナシのクズも!ムカつく奴みんな!さっき殺してやったよ!」

グズマ「本当はカプ・コケコって守り神もブッ殺してやりたいけどな」

グズマ「次は街に出て、この目で見えた名前を片っ端からノートに書いてみんなブッ殺してやる!」

 

138: 2017/01/16(月)18:14:57

その死神との会話を、部屋の外から密かに聞いていた者がいた。
スカル団幹部、プルメリである。
無論プルメリにギベロスタインの声は聞こえていないため、グズマの独り言であると思っているのだが。

プルメリ「ちょっとグズマ!何言ってんの!?」

ギベロスタイン「お?」

グズマ「…プルメリか」

プルメリ「街の人を殺すとか…本気じゃないよね!?」

グズマ「…なあプルメリ。もし直接手を下さず人を殺す力を手に入れたとして、お前ならどうする?」

プルメリ「え…そんなの貰っても嬉しくないし…使わないよ」

グズマ「そうか…」

グズマ「残念だぜ」

プルメリの回答と同時に、グズマのデスノートが広げられた。

 

139: 2017/01/16(月)18:15:08

プルメリは回答を誤った。
偽りであっても正しい回答をすれば、自身の余命が40秒になることなど無かっただろう。

グズマ「なあ、何が悪い!?虐げられた人間が復讐して何が悪い!」

グズマ「復讐のために人を殺して何が悪い!」

グズマ「その結果!世界を変えて何が悪いんだ!」

プルメリの名を書き終わったグズマはペンを投げ捨て激昂した。
そして言い訳をするように、自身の正当性を主張した。

プルメリ「…復讐は何も生まないなんて言う気はないけど…」

プルメリ「人を殺したって記憶は一生忘れられないよ…」

プルメリ「ましてグズマみたいな根の優しい人間なら…ずっと苦しみ続けることになるよ…」

グズマ「…」

 

140: 2017/01/16(月)18:15:17

グズマ「…その言葉、もっと早くに聞けてれば何か変わったかもな」

プルメリ「え…」

その会話で、プルメリの最後の40秒は終わった。

プルメリ「がっ…!?」

プルメリ「グ…ズマ…」

プルメリ「あ…」

黒いノートを手に持ち、寂しそうな表情で自分を見つめるグズマ。
それが、プルメリが目にした最後の光景だった。

ギベロスタイン「死んだか」

グズマ「…行くぞ」

虐げられた者にとって虐げることは容易く、反射に過ぎない。
デスノートを手にしたグズマは、もう止まらない。

 

141: 2017/01/16(月)18:15:50

夕方にウラウラ島を発ったグズマは、メレメレ島のハウオリシティにいた。
ここはウラウラ島のマリエシティとは異なり、観光客ではなくアローラの人間が多い。
ショッピングエリアの人ごみの中、デスノートとペンを手に持ちグズマは立っていた。

グズマ「さあて…行くぜ」

グズマは歩き出し、死神の目で見えた名前を次々とデスノートに書いていく。

 

142: 2017/01/16(月)18:16:02

悲鳴が響いた。
街中を歩いていた中年女性たち数人が、そろって胸をかきむしったかと思うと、糸の切れた人形のように崩れ落ちたからである。
通行人たちは、世界中で発生している謎の突然死が目の前で起こったことに気づくと、パニックを起こした。

ギベロスタイン「いいねえ、こういう祭りは大好きだ!手伝うぜグズマ」

キンダラ=ギベロスタインも同じように通行人を殺し始め、死の連鎖は速度を増した。

グズマ「死神の目、最ッ高だなあ!」

 

 

143: 2017/01/16(月)18:16:13

老人、少女、母親、会社員、配達員、タクシードライバー。
誰彼かまわず、たった今まで普通に生きていた人間が突然倒れて起き上がらなくなる。

グズマ「島巡りなんてクソ喰らえだ!こいつらと一緒にブッ壊してやる!」

誰かの死を目撃した人が、悲鳴をあげて逃げまどう。
死の恐怖に襲われた車の運転手が精神錯乱となり、人の波に突っ込んで数人の人影を空中に放り投げる。

グズマ「ブッ壊してもブッ壊しても手を緩めねえぞ!」

人を避けようとした車が別の車に衝突し、ハウオリシティは炎に包まれた。
実際に人が死んでいるという事実さえなければ、あまりに現実離れしたその光景は喜劇のようだった。

グズマ「破壊という言葉が人の形をしているのがこの俺様グズマだぜえ!」

 

144: 2017/01/16(月)18:16:24

何人かの賢い人間は、笑いながら人の死を眺めるグズマこそが騒動の犯人と考え、ポケモンを繰り出しグズマを攻撃しようとした。
しかしポケモンを繰り出すまでの時間でグズマはノートに「即死」と書き、その横にポケモンの名前を書き込む。
そしてトレーナー本人も殺されてしまう。

グズマ「もう100人以上死んでるぜ!まだまだ死ぬ!」

ギベロスタイン「ん?おい、上から何か来るぞ」

グズマ「あ?」

 

145: 2017/01/16(月)18:16:34

死神の目を持つと、視力は3.5となる。
グズマはその驚異的な視力で上空に浮遊するものを見た。

カプ・コケコ「…」

グズマ「!」

メレメレ島の守り神、カプ・コケコ。
グズマの心の弱さを見抜き、Zリングを持つことを許さなかった張本人である。
多くの人間の死を嗅ぎつけ、ハウオリシティにやってきたのだ。

 

146: 2017/01/16(月)18:16:44

カプ・コケコのスピードは守り神4体の中でも抜きんでている。
グズマに向かって、上空からカプ・コケコは襲い掛かって来た。

グズマ「くっ…!」

咄嗟にグズマはカプ・コケコの名をデスノートに書く。

カプ・コケコ「…!」

グズマ「が」

グズマが名前を書き終わったと同時に、カプ・コケコは守り神の力でグズマの頭部を破壊した。
その後、デスノートを跡形もなく消滅させた。
それで終わりだった。
史上最悪の通り魔は、瞬く間に葬られた。

カプ・コケコ「…」

そしてデスノートに名前を書かれたカプ・コケコも死神の力には抗えず、突然身を強張らせ、ごろりと横になった。
こうして、ハウオリシティの惨劇は幕を閉じた。

 

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